新宿ツバメ亭
甚「そう言やあ、家のかみさんが、年甲斐もなく、大層美人になるという能書きに釣られてツバメの巣入り化粧品なんて言う物を買ってきて、大事に使ってらあ」
六「それで、お前の所のかみさんは、一寸は見られる姿に変わったのかい」
甚「そう言やあ、なんだな。最近では、一寸皺が伸びて、どす黒い顔の色が、何となく見られる程度に、白くなったかもしも知れねえな」
八「それよ、それよ、なんてえたって、ツバメの巣てえものは、食べて珍味、化粧品に入れて、効果絶大、健康食品にしたら、病気知らずと言った優れ物よ。」
六「そいつを、どうやって集めるんだい。」
八「この、アナツバメてえのはな。南の空を飛び回って何万羽も一緒に暮らしているのさ。真っ暗な洞窟の中だって自由自在に飛び回るそうだ」
甚「まるで、コウモリだな」
六「ツバメの巣は、一体どうなってんだ」
八「このツバメはな、産卵期にだけ巣を作って、雛が巣立ちすると巣を捨てて、また、空を飛び回るのよ。それで、残った巣を集めて使ってるのが、ツバメの巣さ。巣を作るのは、雄の仕事で、洞窟の高い崖の岩の上にツバをはきかけてすこるそうだ。鳥の世界も男は大変だな。」