新宿ツバメ亭

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竹蔵 与太郎小話6

 「これからが仕上げよ。俺が、特性の備長炭で火を起こしておいたから、網をおいて、腐れ豆腐せんべいをその上で焼くんだ。
焼けてきたらひっくり返して醤油を塗って何遍もひっくり返してこんがり焼くんだ。最後に、裏表に海苔を貼ると、どこから見ても何処かの名物の煎餅に見えるだろう。」

 「随分美味そうな物が出来たな、これを一つ貰って良いかい。」

 「それだから、お前はみんなから馬鹿だと言われるんだ。この中に何が入っていると思っているんだ。お米婆さんをひどい目に遭わせるために造った物だ。お前が食ってどうなるというのだ。昨日よりひどい腹痛を起こすかも知れねえぜ。」

 「腹痛が一寸楽になったら、それをすっかり忘れてた。」

 「それじゃあな、これをこの皿に盛るから『昨日は、美味しいお魚を頂きました、有難うございました。伯父さんが送ってくれた煎餅ですが、ほんのお返しです』と言ってこれを、婆の所へ持って行くんだ。それだけじゃあなくて何か世間話をしながら、こいつを、婆が全部食い終わるのを見届けて来るんだぞ。」

 

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