新宿ツバメ亭
八「恐ろしい物だな、えらく高価な物だろう」
熊「そりゃあ眼の玉が飛び出るような値段よ」
八「それでツバメ屋の大旦那はどうしたんだい?」
熊「勿論、ツバメの巣をどっさり買い込んで、毎日、煮込んで食べたんだ。3月もするとすっかり、顔の色つやも良くなりげんきになったってわけよ。」
八「そりゃあ、結構なことだ一体どうやって食べるんだね」
熊「少しづつけずって、煮込んでとろりとしたところで味を付けて食べるわけさ。」
八「へー おめえはそんなことをよく知っているな。」
熊「実はな、俺も3月ぐらい前に調子が悪くてふらふらしている時に、ツバメ屋の大旦那から仕事ももらったのさ。 大旦那は三月前とは見違えるほど元気になって、『これもみんな、熊さんのお陰だよ。あんたは私の命の恩人だ。ところで、おまえさん、今日は随分顔色が悪いけどどこか悪いんじゃないかい』と、きいてくれたのよ。『どうもここんところ調子が悪くてふらふらするんですよ』というとな、大旦那が『これを持って行って、毎日少しづつ煎じて飲んでごらん』と言って、ツバメの巣をどっさり下さったのよ。」