新宿ツバメ亭

新宿ツバメ亭

大工の八と左官の熊7

「恐ろしい物だな、えらく高価な物だろう」

「そりゃあ眼の玉が飛び出るような値段よ」

「それでツバメ屋の大旦那はどうしたんだい?」

「勿論、ツバメの巣をどっさり買い込んで、毎日、煮込んで食べたんだ。3月もするとすっかり、顔の色つやも良くなりげんきになったってわけよ。」

「そりゃあ、結構なことだ一体どうやって食べるんだね」

「少しづつけずって、煮込んでとろりとしたところで味を付けて食べるわけさ。」

「へー おめえはそんなことをよく知っているな。」

「実はな、俺も3月ぐらい前に調子が悪くてふらふらしている時に、ツバメ屋の大旦那から仕事ももらったのさ。 大旦那は三月前とは見違えるほど元気になって、『これもみんな、熊さんのお陰だよ。あんたは私の命の恩人だ。ところで、おまえさん、今日は随分顔色が悪いけどどこか悪いんじゃないかい』と、きいてくれたのよ。『どうもここんところ調子が悪くてふらふらするんですよ』というとな、大旦那が『これを持って行って、毎日少しづつ煎じて飲んでごらん』と言って、ツバメの巣をどっさり下さったのよ。」

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