大学時代に六年ぶりに尾瀬を再訪した。今度は四人ずれで、水芭蕉の咲く梅雨時であった。
大清水でバスを降りると雨が降っている。茶店で、菅笠を買い、ポンチョ(雨具)でリュックサックと体を包み歩き出した。今回は道に迷うこともなく三平峠への道を大勢が一列に並んで歩いるのに続いて登って行った。 同行者のSは長野県出身でスケートが得意、高校時代にスケートの県代表選手として国体にも出たことがあるという頑健な男。山梨県の山育ちのWは、がっちりした体格で背はやや低いが熊のような男である。重い荷物を背負って、彼らは、疲れを知らずに歩いている。 私も少々、山登りにはなれていたので、荷物の重さは苦にならず快適に歩くことが出来た。
一人だけ都会育ちのほっそりとした長身のイケメン男Nは、登り初めは、元気に話ながら歩いていたが、三平峠のちょっと急な登りにかかるころに、「心臓が痛い」と言い出した。