新宿ツバメ亭

新宿ツバメ亭

大工の八と左官の熊9

「ところがな、今見ていると、おめえはなんだか生白くなってな、まるでヒグマがシロクマに化けたようだぜ。 俺にも一寸、そのツバメの巣とやらをわけてくれねーかい」

「他ならぬ、友達のおめえのことだ、分けてやらねえとはいわないが、おまえが、あんばいが悪いからと言って二の足を踏んでいた、今度のツバメ屋さんの店の大きな改築を一緒にやるのなら、分けてやるぜ。半月も、食べ続けたら、足腰がピンシャンして、普請場なんか何でも無くなるぜ。」

「熊、恩に着るぜ、持つべき物は良い友達だなあ」

「調子の良いときだけ、良い友達にするなよ。これからもせいぜい良い仕事をしようぜ。ツバメの巣を食ってよ!」

「全くだ」

「今度の普請の件で、大旦那にあったら、また、ツバメの巣をもらっておくよ。 何しろ、ツバメ屋の藏から千両箱をいくつも運び出して、藏一杯ツバメの巣を買い込んだのさ。大旦那に頼めば、また分けてもらえるだろう。」

「ああ 痒い痒い ここはヤブ蚊が多くてかなわないよ。おめえは、大丈夫かい。」

「俺は何ともないぜ」

「さっきから、俺ばっかり蚊に喰われて、難儀しているのに、おまえには蚊が一匹もとまらないじゃんねえか。一体どうした訳なんだい。蚊取り線香でも食ってるのかい?」

「まあ良い物を食っていると体が丈夫になって蚊なんぞ応えなくなるんだろうな。 それにな、俺が毎日ツバメの巣を食っているんで、蚊のやろうが俺のことをツバメの親せきだと思って近づくと食われちまうと怖がって近づかないんじゃあないかい。!!!!!」

ええ、お後がよろしいようで!!

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