新宿ツバメ亭

新宿ツバメ亭

物知りの八さんと碌でなしの六さんのお話です。

「よう八、まだ生きてるかい。ツバメてぇ鳥はえらく早く飛ぶそうだな、知ってるかい!」

「おめえが来たら、面白いことを一寸教えてやろうと思ってたらついうたた寝をしてたんだ。ツバメのことをお前が言うとは驚きだ。ツバメが速く飛ぶのはあたりめぇよ!速いツバメにあやかろうてぇことで昔はツバメなんて特急列車が走っていたくらいだ。そいつの、早いのなんのって鈍行列車なんかは駅ごとに追い越してあっという間に東京と大阪を行き来してしまうんだぜ。昔の人は東海道を10何日もかかって京大阪まで行ったもんだ。赤穂の殿様が吉良上野介に刃傷したときは、江戸から赤穂まで早かごで、知らせにいたが、駕籠かきは宿場毎で代わるが乗ってる侍は乗りっぱなしだ6日かかっ、。赤穂へ着いたときには這いつくばって歩けなかったそうだぜ。ところがな今時は、東京から赤穂なんて半日もあればいけるんだぜ。」

「汽車とツバメと赤穂浪士とどういう関係があるんだよ。」

「そりゃあ、物の例えって言うもんだ。おめえ、ツバメがどれくらい速く飛ぶか知っているかい。それはそれは速いもんだ。飛んでる蚊なんて物はアッという間に食ってしまうんだぜ。」

「飛んでる蚊を食っちまうのか。そりゃてえしたもんだ。俺なんざあのないだ脛に止まって散々俺の血を吸った蚊を取り逃がして、悔しくってたまらないぜ。ツバメが俺の敵を討ってくれたかな。俺の血を吸った蚊を食ったら、そのツバメは俺の血筋てえことにならないかい。」

「馬鹿も休み休みにしねえかい。お前の血を吸った蚊を食ったツバメは今頃下痢でもしてるだろうよ。」

「ところでツバメがどうしたと言うんだい。」

「それをお前に教えてやろうと思って、おめえを待っていたのよ」

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