新宿ツバメ亭
六「するてえと、ツバメは北へ行く船と南に行く船が解ると言うのか。」
八「そこが、ツバメ様の偉いところよ。お前のような方向音痴には想像もできめい。ツバメてえ鳥には頭の中に、俺たちの知らない絡繰りが仕込まれているそうだ。これはたぶん天の偉いお方がやったんだろう。もっとも俺たちにはあまり必要がないのでもらってないだけがなんだよ。」
甚「よう、六に八随分話が弾んでるようだな。何の話だい。なんだかツバメ・ツバメと言ってたけどツバメがどうしたんだい」
八「それを、このわからすやの六に教えてやってるんだ。」
六「分からず屋とはなんでえ!ちゃんと説明してねえじゃないか」
甚「八、それを早く言いねえな」
八「それじゃあ教えてやるから、よく聞いときな。これから俺が話すツバメはお前達の軒下に通ってくるツバメとは違うのよ。そいつはな、アナツバメといってな、南の方に住んでいるツバメだ。」
六「そのツバメがどうしたって言うんだい。」
八「このツバメの巣が、今、大人気のツバメの巣さ」
六「そりゃー一体何でえ」