新宿ツバメ亭

新宿ツバメ亭

大工の八と左官の熊3

「そりゃあおめえの日頃の行いが悪いから、お天道様がちょっとおまえをからかってみただけなんじゃあないかい。それに、ここの軒下のツバメの巣なんざあ食えるもんか。俺が言ってる、ツバメの巣は、ここの軒下のツバメの巣じゃあないぜ。それはそれはてえしたもんだ。」

「おめえはずいぶん物知りのようだが、言っている、ツバメの巣てえどんなもんなんだい」

「そろそろ乗ってきやがったな」
  「それが、大事な今日の話よ。」

「それを聞かしてもらってから、朝昼兼用の飯にしようかな。これをブランチなんて言うハイカラな言葉を、おめえは知らねえだろう。ざま−見ろ!! ところで、おめえの言うツバメの巣がどれほどてえした物か知らねえけど、俺のうちのツバメの巣も役に立たないばかりではないぜ。ツバメが卵を産むてえとな、蛇がやって来て卵を飲み込んじまうのさ。 一度は卵をみんな取られて親鳥がピイピイ鳴いていたことがあったさ。 それからてえものは、俺が、巣の張り番をして、蛇がやって来るてえと、しっぽを掴んで頭を土間にたたきつけ、目を回したところを、腹を割いて骨と皮を引き抜いて、蛇の身を、こんがり焼いて、タレを効かせて蒲焼きにするんだ。オフクロや女房(カカー)子供達には、一寸俺が川まで行って捕ってきたウナギだと言って食わせてやったら、美味い、美味いといって、大喜びよ。とりわけ子供達は 『この前お父さんが、川で取ってきたウナギよりよっぽどおいしいよ』と、大喜びさ。それから3べんばかり、蛇を捕まえたがその後は、もう蛇はやって来ねえ。また来てくれると良いんだがな。燕の方は蛇が来ないもんだから、ピイピイピイピイ太平楽さ」 蛇なんか食って、おめえは気楽でいいな!

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