新宿ツバメ亭

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竹蔵 与太郎小話3

 「お前、あの大海医院へ行くのか、もっと別の所を探した方が良いぜ。大海医院は、内科・小児科・外科・産婦人科まで看板を上げているが、見立てが大雑把で扱いが荒いと言ってみんな敬遠してる先生だぜ。」

 「それでも、看板には医学博士 大海権之助と大きく書いてあるぜ」

 「そんな物は信用できねえ、聞いた話によると大海先生は若いころ南方で軍医として戦場にいたそうだ、だから戦争で怪我をした兵隊さんの手や足をどんどんちょん切って手当したそうだ。お前がや、腹が痛いなんていて、行ってみねえ、先生、すぐにお前の腹を割いて臓物を引っ張り出して、ざくざく洗ってまたお前の腹の中にしまい込み、縫い合わせてこ『れで良いよ』と言われるに決まっているさ。」

 「随分、荒っぽいんだな。臓物をゴミ箱に捨てられたらどうしようかな。」

 「お前は、臓物より脳をすててもう少しましなのと代えて貰った方が良さそうだな。」

 「ひどいことを言うじゃあないか。」

 「まあ、兎も角、大海先生の所へ行ってききな。一寸でも具合が良くなったら帰りに寄りな。あの婆さんを懲らしめる手立てを考えようじゃないか。」

 

 

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