初めての旅は、小学校の修学旅行である。神戸の西の方の小学校へ行っていた私たちの修学旅行は、一泊2日のお伊勢参りであった。
これは、当時としては初めてのことである。
朝早く、須磨の駅に集合し、総勢五〇〇人(当時は現代のような少子化の時代でないので、小学校には1年から6年まで合わせると三〇〇〇人以上の子供達がいた)の小学6年生が、貸し切り列車に乗って須磨駅を出発した。大阪駅へ着いたころ、丁度出勤途中の父が我々の汽車を見つけて窓越しに少しの時間会話した。
汽車は蒸気機関車である。大阪を過ぎ京都を過ぎて東山トンネル続いて逢坂山トンネルへ入ると、みんなで大急ぎで窓を閉めなければならない。窓を閉めようとして、間違って日よけの木の鎧戸を閉めると、煙がもうもうと入ってくる。子供達はほとんど汽車で長旅をしたことがないのでその都度、あちこちで、絶叫とパニックが起る。それも大きな旅の楽しみだったかも知れない。
やがて汽車は、鳥羽へ到着し、子供達は、先生に誘導されぞろぞろと歩いて行く、当時、観光バス等は使わず、土産物屋や海産物を売る店の間を海に向かって歩いて行った。その時見たサザエの壺焼きの香りは忘れられない。みんなは、ぞろぞろ歩いて、二見ヶ浦の夫婦岩を見た、海の中にある二つの大小の岩をしめ縄綱でつないだ光景は、何か神々しいもののように思えた。
それから、いろいろなところを回って、旅館へ着いた、皆、米を何合か持参することになっていたので、先ず、米の徴収から始まり、芋の子を洗うような状態でクラス毎に短い入浴、そして夕食と続く、そこで何を食べたかは全く覚えていない。
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