翌日は東京オリンピックの開会式であった。札幌駅でチラリとテレビで開会式の模様を見た後、札幌の街を歩き回った。あいにくの雨であったが、結構楽しい市中散歩であった。夕刻、止めて貰っているお宅に帰ると、奥さんが濡れた靴に新聞紙を詰めストーブのそばに置いてくれた。「こうすれば明日の朝は使えますよ」と言って微笑んだ。
翌日は、北大助教授の父の友人の息子さんに校内を案内して貰いポプラ並木や、資料館を見学した。薄汚い教室も見せて貰ったが机の上には、タバコの灰皿代わりの缶詰の空き缶がいくつもおいてあるのには驚いた。
植物園の隅に、太い鎖に繋がれた真っ黒い大きな犬が居た。多分南極から生還した樺太犬の太郎であったろうと思う。
その夜、札幌を離れ、夜行列車で稚内に向かった。
早朝、稚内に着いたが殺風景なところで何もない。港へ行ってみると、ラーメンの屋台が出ているだけで、ここも目立つものがない。利尻島・礼文島へ行く船があるというので切符を買って乗り込んだ。小さい船である。
甲板下の客室には大勢の人が乗っている。横になっている人も大勢いる。夜行列車の睡眠不足を解消しようと思って私も船室で横になった。
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