やがて、船が動き始め、次第に揺れが大きくなった。周りの人の内何人かが、備えられている小さな缶に向かったおう吐している。船室内は異様なにおいが漂ってくる。たまりかねて甲板へ出た。船は右に左に揺れ上下にも揺れている。甲板の一番後ろに座って手すりにつかまって、荒れ狂う波を見ていた。甲板には時々波しぶきがかかるが、船室よりは快適で、利尻島までやって来た。下船しようかと思ったが、もう少し船に乗っていたくなって、礼文島まで行くことにした。
礼文島で下船し船で知り合った学生と一緒に宿を探していると、何人かの旅館の案内人の中に無精髭を生やした、おじさんがユースホステルの旗を持って立っていた。ユースホステルなら安かろうと思って、このおじさんに交渉すると、すぐにOKとなり、小さい車に乗って宿へ着いた。桃岩壮と言うユースホステルはハンバの様な所だった。寝所は二段ベットがずらりと並んでいる。その一つをあてがわれた。其処に荷物を置いた。
オヤジさんは、「それじゃ、釣りに行こう」と誘う。竿は、背丈ほどの竹の竿でそれに太い紐と大きな針のついた物を貸してくれた。宿のすぐ近くに、海に突き出した突堤がある。海の水は非常に澄んでいる。その突端まで行くとオヤジさんはこれを付けて釣れと言って、一〇センチほどの生の鰯をくれた。
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