Wのリュックサックで大切に運ばれたウイスキーの瓶も石のテーブルの上に置かれている。山の冷たい水でのウイスキーの水割りは格別である。さっきまで死んだように眠っていたNも、食事をして水割りを飲むと、すっかり元気にになってはしゃいでいる。
暮れかかる夕日の中で尾瀬ヶ原の湿原の彼方に黒々とどっしりそびえている至仏山は神々しい。
その夜は快適なテントで熟睡した。その翌日はゆっくりと寝て、朝、昼食後尾瀬ヶ原へ向かった。昨日とは打って変わって好天に恵まれ、湿原に咲いている水芭蕉を見ることが出来た。前回来たときは真夏だったので日図芭蕉はほとんどおわっていたから、ぜひみたいとおもっていたら、運良く水芭蕉に合うことが出来た。
前日、心臓が痛いと言って騒いだNには荷物を持たせず、三人が分担して荷物を背負い尾瀬ヶ原の木道にかかった。
木道のなかった数年前には湿原を歩いて沼に埋まりそうになった経験を思い出し数年のうちに尾瀬はすっかり観光地として整備されたんだと思った。
木道を歩いている、ほとんどの男性も女性もテントなどの大きな荷物を背負って歩いている。空身のNは一寸恥ずかしいのか「もう大丈夫だから僕にも荷物を持たせてくれ」と言うが、三人にとっては、彼が倒れたら彼を運ばなければならないと思うと、彼が空身でも歩いてくれているだけで大助かりだった。
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