旅は順調に続いていたが、なにぶん数日間風呂に入っていなかったので、珠洲海岸にテントを張ったとき、銭湯へ行こうと言うことになった。浜辺にテントを張り夕食を済ませてから、一人がテントの留守番をして3人が、バスを降りて買い物をしていたときに見つけておいた銭湯へ行った。
湯船は木製の古いもので、風呂場は薄暗い。小さな湯船の中に土地の人だろう3人の中年のおじさんが、楽しそうに話し合いながら気持ちよさそうに入っている。
われわれも入ろうとして、湯船を見ると湯は、白くにごってなんとも言えない臭いがする。それでもおじさん達は気持ちよさそうに入っているのだからと、我々も体を簡単に流してから湯船に浸かった。
入ると生ぬるい湯で、おまけに白くにごって妙な臭いはいっそう強く鼻につく。耐えられなくなって湯から上がり体を洗おうと思うと、カランからは水しか出ない夏でよかったと思いながら体を洗いもう一度湯船に入ることは止めて上がることにした。
二人の友人はやや暫し、風呂に浸かって居たが上がって来て、「こりや、ひどいもんだな」とささやいた。
三人が帰ってから、留守番をしてくれた友人に、銭湯の様子を話し、行くようにすすめると彼は、「僕は、止めとくよ。すぐにちゃんとした風呂に入れるから」と言った。
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